最高裁判所第三小法廷 平成5年(行ツ)174号 判決 1994年2月08日
宮城県塩釜市北浜四丁目一五番二〇号
上告人
佐藤仁寿
宮城県塩釜市旭町一七番一五号
被上告人
塩釜税務署長 千葉嘉昭
右指定代理人
須藤義明
右当事者間の仙台高等裁判所平成五年(行コ)第七号不作為の違法確認請求事件について、同裁判所が平成五年八月一〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
本件訴えを不適法とした原審の判断は、正当として是認することができる。所論は、違憲をも主張するが、その実質は単なる法令違背の主張にすぎない。論旨は採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 可部恒雄 裁判官 園部逸夫 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 大野正男 裁判官 千種秀夫)
(平成五年(行ツ)第十七四号 上告人 佐藤仁寿)
上告人の上告理由
上告人は被上告人に平成四年一月二九日酒類販売業免許の条件緩和申請をした。被上告人に、平成一年六月一〇日付国税庁長官通達酒類の販売業免許等の取扱いについての中、第一〇免許事務の処理期間の申請受理日より四ケ月以内に事務処理を行なう(甲第一号証)ことを原則にしているにもかかわらず、上告人申請書(甲第二号証)に対し被上告人は平成四年一二月二五日に処分をしたのである。
よって被上告人は、平成四年五月二九日より平成四年一二月二五日迄不作為を続けたのである。逆にその期間作為義務違反をしているのが争点なのであるから、作為義務違反が確認出来ることにより、不作為の違法確認が出来るのである。
右四ケ月の処理期間は、通達による訓示規定によるものであるが、上告人は、明示された処理期間を信頼して行動の計画を立て準備をしていたのである。それ故に、当期間が守られずに処分が遅滞したため、権利利益が侵害され又、その間精神的にも苦痛を受けその為経済的にも損害が目に見えないところで発生しているのである。法律に明示された事柄に対する人の信頼を保護するという観点からすれば「立法行為によって定立されながら、訓令の性質および効力を有するにとどまる」訓示規定なるものは、大いに問題がある。いやしくも法律の形式をもって表示された規定は、すべて効力規定であるとして、訓示規定なるものは、内部通達でありながらその内容及び運用については、国民を具体的に固縛するものであるから、訓示規定を全面的に否定するか、それが出来ない現状ならば、その訓示規定の一般式を、裁判所が唯意味の無い棄却判決だけで無く、行政を監視する機関として国民の利益の為判断を出すべきである。ちなみに昭和二四年四月一三日水戸地方裁判所で「審査庁が裁決期間を漫然と徒過することが『適法』であってはならない」としている。
又、美濃部達吉博士は、昭和一四年度公法判例評釈の中で裁決期間に関して、「それは明白に法律上の拘束力を有する強行的の規定であり、任意に之に違反し得べきものではない。若し之に違反すれば明らかに違法である。」としている。
申請日より処理期間が四ケ月としているが被上告人は、これ以上何ケ月何年何百年先でも事案処理はよいと言っているのであり、裁判所も、判決時において不作為が無くなっておれば、訴える利益がないとしている。しかし不作為の違法確認の訴訟は『私人が行政庁に対し法令にもとづき許認可、免許等の申請あるいは不服申立てをした場合、行政庁において、相当の期間内にこれに対する認容、棄却、却下あるいは裁決、決定等の応答をしなければならないのに、行政庁がこれらの申請を握ったまま何らの処分をしない状態、この行政庁の不作為状態を訴訟の対象として、判決をもってその違法を確認することによって当該判決の拘束力により行政庁に処分等をうながし、かつ、行政庁が何らかの処分等をした場合に当該処分等に不服があるときは、この処分等をさらに争わせることにより、最終的に私人の権利利益の保護を図ることを目的としている』が最近は、この訴訟が不利益処分を争う取消訴訟とは別の紛争形態として、利益処分を求める実質をもつ点で無名抗告訴訟たる義務づけ訴訟のほうに連なる性質の抗告訴訟でもあるし、申請の実体的内容の当否につき審理し、勝訴判決において行政庁の応答内容をある程度指示するような判断を肯定し、このような運用をはかるならば不作為の違法確認訴訟によっても、義務づけ訴訟に代わりうる機能が期待できるのである。
この様に今日において行政庁において許認可件数は増加の一途をたどってきた。現在においてこれらの許認可の為国民の公益に対し公正で自由な競争が出来なくなって来たのである。又、裁判所においても甲第三号証上告人実母佐藤ヨシコの酒類販売業免許の条件解除について申請日より六年余り経過後処分をしたのである。この場合申請より五年余り経過後、裁判所に提訴したのであるから、提訴時において判決をするべきである。この様な判決が行政庁の不作為の違法を繰り返えさせる温床になっているのである。このような行政庁の不作為は国民全体の公益にも反することであり公共の利益の為無名抗告訴訟の対象となり得るのである。
酒類販売業免許申請処理期間において、同じ塩釜税務署管内において、上告人佐藤仁寿の住所宮城県塩釜市北浜四丁目一五番二〇号上告人実母佐藤ヨシコが免許人の酒販店住所宮城県塩釜市北浜四丁目一五番二〇号より一番近い酒販店株式会社やまやについては述べる。
株式会社やまやは、酒類販売業免許の条件解除申請において申請日より、たった五日間で許可がおりたのである。佐藤ヨシコの申請より六年余り、上告人の申請日より一一ケ月余り、と被上告人が恣意性をもって処分したことは明白である。又株式会社やまやは、同被上告人に酒類販売業免許を申請した際一ケ月余りで、許可が出たのである。おどろくべきことである。
被上告人は上告人に対し申請により作為義務があるにも作為をしなかったことにより、違法に長期間<1>自由権利、<2>作為に対する信頼の原則、<3>平等の原則、<4>公務員の公平の原則に違背するのである。以下その法令を掲記する。
<1> 憲法一二条自由、権利の保持の責任とその濫用の禁止。
<2> 憲法第一三条個人の尊重と公共の福祉。
<3> 憲法第一四条法の下の平等。
<4> 憲法第一五条二すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
最後に、行政裁判は、国民対行政庁なのであるから、その担当裁判官は過去において、行政官だった者、又は行政官と共に協力して仕事をしてきた検事、検察官等の者は、行政裁判を担当してはならない。担当する場合又はした場合は、高裁、地裁の場合は民事訴訟法第三九五条二法律に従いて判決裁判所を構成せぎりしとき、になる。又最高裁においては、憲法第三二条裁判を受ける権利。憲法第一四条法の下の平等、違背するものとなる。公正な裁判が憲法第一一条基本的人権の享有であり、過去行政官に関係した裁判官の行政裁判は、公正とはなり得ないのである。
以上
(添付書類省略)